スタンダードプラン

グリーンカプス製薬株式会社

AI面接で人となりを引き出し、コア人材の採用育成をめざす

有効成分の保護機能や封じ込め機能に優れ、難溶性薬物の吸収性を改善するソフトカプセルは、医薬品や健康食品などに欠かせないものとなっている。創業6年を迎えたグリーンカプス製薬株式会社は、ソフトカプセル技術を活用した製剤開発・製造受託により、製薬産業の発展に寄与、急成長を遂げている。従業員が長期間、幸福に働けることを掲げて人材採用にも力を入れており、2022年から対話型AI面接サービスSHaiNを導入した。それから1年、採用はどう変化したのか、代表取締役社長の植木俊行さんに伺った。

AI面接は客観的な評価で面接官の偏りをなくすシステム

「AI面接を導入するきっかけになったのは、ビジネス雑誌で見た記事でした。AIを使った面接という内容に興味をもち、調べてみたところ、タレントアンドアセスメント社の名を知り、問い合わせをしてトライアル受検をやってみました」
新しいことに意欲的な若い社風と、オンライン上でのやり取りや面接に対して抵抗がない環境が背景にあったため、AI面接自体への嫌悪感は少なかった。「ただ、AIに評価を任せることには少し抵抗がありました。評価基準がブラックボックスなのではないか? それで採用を決めていいのか?」という迷いがあった。それを乗り超えて導入に踏み切ったきっかけは何だったのだろうか?

「トライアル受検には社員がモニターとして参加しました。納品された面接評価レポートを見て、回答したことがすべて文章化され、一つひとつ事実をきちんと確認できることがすごくいいシステムだなと思えたんですね。どの受検者からもきちんと答えを引き出しています。対人面接でここまですることは結構難しいです。もちろん面接官はある程度トレーニングをして臨みますが、どうしても面接官個人が興味のあることや、近い経験をもつ候補者に対して無意識に気持ちが向いてしまい、質問の内容が偏ることがあります。実際に私自身も正社員の面接にはほぼすべて立ち会いますが、客観的に質問し、人を評価するということに対して、毎回のように難しいと感じています。また、面接官によって重視すべきと考える項目が違うこともありますし、部署によっても候補者を評価する視点が違うなどの問題があり、全社共通で点数の基準を決めるなどの工夫をしてもフラットな評価は難しかったですね。AI面接は、客観的に評価する指標がしっかりあって、その人自身を探ることができるシステムだと実感したことが1番の決定打になりました」

 

受検者の反応は良好、中途採用で活用

現在、グリーンカプス製薬では、年間15名程度 の中途採用においてAI面接を利用。今年からは新卒採用も開始し、順次活用を進めていく見込みだという。採用フローでは最初の書類審査でかなり絞り込むため、その後行うAI面接では合否を決定するよりも、人となりを見極める使い方に注力している。AI面接の導入前後において、対人での面接の判断基準は異なるのか聞いてみた。「従来の対人面接の目的は大きく分けると2点ありました。1点目は、我々が求めている業務内容に関する経験やスキル、知識、いわゆる業務遂行能力があるかということです。2点目は、企業文化に合うかということです。当社では社員に長期で働いてもらいたいと考えているので、そこは重要視しています」この2つ目の目的を、人に代わってAI面接が担うこととなった。

「実は面接評価レポートの回答部分を読むと、これがとてもよく出ているんです。これまでに経験してきたこと、どんなことをどんなふうに頑張ってきたのか、人となりがわかるんですね。対面での面接だと、少し内容を大げさに話す方、たとえば、プロジェクトメンバーだったのにも関わらず中心人物でした、と話してしまうような方がいます。対人の面接の場では、言葉をそのまま受け取るしかないのですが、AI面接のシステムであれば、しっかり聞き取りますから、本当のことがわかるなと感じます。回答部分で何を語っているか、その内容をじっくり読み込んで判断していますね。実は、面接評価レポートの評点については、この点数が低いから落とすとか、高いから採用するとかっていう意味の使い方はしていないです。回答内容がメインで、評点は参考にとどめています。」

面接評価レポートで、特に注目している資質はないかを確認すると、「注意して見るのは、観察項目のストレス耐性の評価でしょうか。というのが、まだ我々は若い会社で動きがあるので、仕事に対して安定して取り組む姿勢を見ていますね。もちろん、AI面接だけで評価できないところがありますから、高い点数の方を採用する、というのではなく、逆に、ストレスの点数が低い場合に、改めて対人の面接の際に確認しようという使い方をしている」ということだ。
社内や受検者の反応については「最大2時間くらいかかった受検者にはさすがに『大変だったね』と声をかけました。しかし、意外につらかったというような反応はなかったですね。以前はSPI検査を使用していたのですが、そちらも約1~2時間はかかりますので、違和感はなかったのかもしれません。スムーズに導入できた印象です」

 

AI面接で生み出す、候補者との対話時間

社長の植木さんによると、もっとも変わったのは、対人での面接時間の使い方だという。「AI面接導入後は、会社の説明とか、入社への動機付けなどに時間を使っています。これまでいかに話を引き出すか、客観的に聞き取るか苦労していた部分をAI面接に任せて、候補者と対話をしていくことを重視できるようになったんです。我々はこういう会社で、こういう人に来て欲しいっていうことをお伝えできますし、対話の中で、性格や雰囲気を見たり、AI面接から得た情報を深掘り確認する時間を取れるようになったりしたのもメリットかなと思っています。」

AI面接導入による業務の負荷軽減は叶ったのだろうか。「業務負荷は減ったと思います。旧フローでは、スキルや経験にあらかじめ定義づけをした評価シートを用いて面接していたのですが、面接評価レポートで事前に文章化されていることで、記録の負担が軽減しました。ただ、面接回数や作業量の減少よりも、会社について話ができる時間が生まれたことが大きいですね。これまで、本人の資質の把握に使っていた全体の6割か7割、時間にして30分から40分の時間が、入社への意欲を引き出し、会社についてより知っていただく時間に使えるようになったことが、大きなプラスになった。これにより、入社への流れがスムーズに進むようにはなったと思いますね。まだ若い会社なので情報量が少ないということもあり、内定後に、会社についての質問をしてくる方が多数あったのですが、採用工程においてしっかりと話をする時間をもったことで、ほとんどなくなりました。もちろん対応の負荷が減ったこともありますが、不安や疑問を抱えた内定者が減り、安心して入社を迎えているという実感があります。我々の仕事は静岡県という地域に密着した産業です。そのため、製造の経験者などは地元からの採用が多いですが、製造以外の経験者になると、他県にある医薬品のメーカーから転職してくる方もいるので、オンラインでの採用は非常に進めやすかったです。今後さらに全国からの採用が増えると、AI面接の活用も多くなるでしょうね。」

 

大きく飛躍する会社の成長に合わせ、ともに働き、会社のコアとなる人材を獲得したいと採用業務も変化してきた。AIと人間がそれぞれの役割を分担した新しい採用フローにより、一人ひとりに寄り添った採用のカタチが実現している。